時間と人の手を伝わり生まれるうつわ

工場の裏手に流れる小里川。その傍らに、1846年(弘化三年)日本で初めて銅版転写による絵付けを試みた里泉焼(りせんやき)
の石碑があります。すでに途絶えたその窯元と同じ場所で、想いを受け継ぎ1977年に深山は誕生しました。
鋳込みという泥状の白磁土を石膏型に流し込み成形するこの技法は、多くの人の手を渡り器となります。
私たちの器は産業に根付いています。それは、できるだけ手に取り頂き易く、かつ良質な器を作り出したいと願うためです。
そのため毎日同じように工程を繰り返します、その瞬間だけをみれば人でも機械でも変わり無いように感じるかもしれません。
しかしながら、人の手は考えます。同じ作業に見えても日々変化します。些細な変化は継続することで大きな改善につながります。
受け継ぐということは決して平坦ではなく、積み重ねて高くなっていくことでもあります。
想いを受け継ぎ、ものづくりは積み重ねていく。その時間は財産となります。

里泉焼
里泉焼

1846年(弘化三年)、小里村(現岐阜県瑞浪市稲津町)。日本で初めて銅板転写による絵付けを試みた窯元。現在は閉窯。

石膏型
石膏型

器を成形するための型。吸水性の高い石膏で作られており、粘土を水で溶いた泥を注入すると水分のみ吸収し形がつくられます。

圧力鋳込
圧力鋳込

主にお皿や鉢、カップの成形に使用。泥を圧力で型に注入します。四角形や仕切り皿など特徴のある形の器を作る事ができます。

排泥鋳込
排泥鋳込

ポットや花瓶など胴体より口が細い袋物と呼ばれる形を作る。圧力鋳込と同じ理論ですが、付属品も多く手間がかかる成形方法。

素焼
素焼

水分と不純物を焼失し、固め、吸水性を高めるため800度程度で一度目の焼成を。これにより絵付や施釉の精度が上がります。

絵付
絵付

里泉焼の流れをくむ銅版転写による下絵付けを得意として、一つ一つ、人の手で作業します。その後、その器に釉薬を施します。

施釉
施釉

焼く事で光沢や質感がでるガラスが入った液体「釉薬(ゆうやく)」を素焼きの吸水性を利用して、器の全面に吸着させる工程。

焼成
焼成

艶やかな光沢を纏う白磁釉は1350度の還元焼成で、織部などその発色が特徴の色釉は1240度で酸化焼成し器となります。

かつて世界有数であった白磁洋食器の生産地

岐阜県南東部を生産地とする美濃焼。その中で瑞浪市は、かつて世界中に洋食器を製造輸出していた世界的生産地でした。昭和20〜50年頃までは世界の工場といった様相で主に欧米や国内のハイブランドの洋食器OEM工場として、その品質基準に合致する上質な白磁の製造に従事していました。1985年(昭和60年)プラザ合意以降、為替の大幅な変動で輸出は減退しましたが、現在も多くの磁器の窯元が存在し、その素材や技術の基礎はこの時期に築かれました。深山では、それらの中から「白磁をうつくしく焼き上げる還元焼成技術」と「繊細な形状を作り上げる鋳込成形技術」を受け継ぎ、基礎として新しいものづくりに挑戦してきました。歴史に培われた地域と共に歩むことで、過去の技術を現代の器にそして、暮らしに繋げることが可能となります。

岐阜県瑞浪市
岐阜県瑞浪市

昭和40年代は国内洋食器製造の25%を占めた一大生産地。その時代の素材や技術を受け継ぎ現在も十九の窯元があります。

人=技術
人=技術

同じ素材、同じ形でも、季節や天気などで不規則に変化するものづくり、最後は職人に根付く技術で丁度良い具合に仕上げます。

OEM
OEM

OEMとは他社ブランドの製品の製造委託。国内外のハイエンドな洋食器の基準で作り続けたことで技術と意識が育まれました。

輸出産業
輸出産業

輸出が盛んな時代、全国から金の卵として集まった人材。その先人たちの手で技術が生まれ、育ち、現在まで受け繋がれました。

素材を美しく仕上げる

「縁があり出会った器。盛り付け易く、汚れ落ちが良いので、ヘビーローテーションになった器。いつも食卓に在って、たくさんの思い出と結びついた器。だからこそ使い続けたいと愛着を持った器」そんな理想の姿を描けるよう、私たちは白磁を「白さが心地よく」「光が優しく透けるほど」「気兼ねなく扱え」「汚れが落とし易く」「永く清潔にお使い頂けるよう」うつくしく仕上げます。それは素材の特性を充分に引き出すこと。私たちの白磁であれば、高い白色度や光を透かす外面と共に、多くのガラス質を含む白磁の内面を高めること。洋食器ブランドのOEMに従事した経緯から、私たちの白磁土は長石や硅石というガラス質を多く含みます。そのため、焼成後に器は白く適度に光が透けるようになります。これは素材がガラス化したためです。ガラス化とは単に融けただけではなく、焼成前に器にあった目で見えないほどの小さな空洞に融けたガラス質が埋まり隙間なく焼き固まったという事です。故に器は焼いた後は13%ほど小さくなります。空洞が無くなると汚れつきが減り、洗い易くなり、清潔にお使い頂けます。器が永く暮らしを共にするうつくしい道具となるよう、私たちは器を、まず素材をうつくしく仕上げます。

硝子化
硝子化

厚みではなく透光性。光が優しく透けるのはガラス化をしているため。白磁はガラス質の多い素材を1350度で焼いています。

日常の道具
日常の道具

素材をしっかりと硬く焼き締めた磁器のうつわたちは、気兼ねなく使える日常の道具。何よりも食と食の時間を楽しく美味しく。

安心のうつわ
安心のうつわ

ガラスのようにツルツルなので汚れが洗い落とし易くて清潔な白磁のうつわたち。お子さんのご飯にも安心してお使い頂けます。

使い勝手(その他)
使い勝手(その他)

素材の特徴だけでなく、スタッキングが良かったり、仕切りがあったりと機能についても使い易いさを大切に開発をしています。

うつくしいうつわ

うつくしいうつわとは私たちのものづくりへの思いです。歴史、地域、素材、技術と私たちは多くの大切なことに囲まれています。その大切なことで私たちの器のおおよそは出来上がっています。その最後に少しだけ私たちの思いを加えます。”美しい器”ではなく”うつくしいうつわ”。古代に中国大陸から伝わった漢字を基に自らのライフスタイルに合わせて平仮名を生み出し、そして、中国で生まれ景徳鎮で発展した白磁の製造技術が、朝鮮半島を経由し日本の有田に伝わった後に独自の器づくりを行った日本人の美意識のように、受け継がれたものを大切に、しかし、あくまで道具として現代の暮らしのための器を生み出す。今を生きる人たちの喜びのために、過去に人が暮らしてきた時間にきちんと向き合い、その想いを受け継ぎ、丁寧にものを作り続ける。それを想い続けることが私たちのものづくりてす。

ご家庭使いの器
ご家庭使いの器

「suiren 」1999年に誕生し現在まで続く定番の白磁の器。柔らかく揺らいでいるお皿、鉢、カップなどそれぞれ14種類の器は、和洋中など多様な料理を受け入れる日常使いの食器です。

贈りものの器
贈りものの器

「mizu-hiki」お祝いの象徴「水引」をモチーフとした紅白のギフトセット。取皿、小皿、箸置が、木箱の中では水引の形に、食卓では定番の器に、贈る人、受け取る人共に嬉しい贈りもの。

for Hotel & Restaurant
for Hotel & Restaurant

「for dinner」、シェフの想いのまま自由にお使い頂けるよう、料理のためのキャンパスに見立てたベーシックな丸と四角の平らな皿。器の一辺が立ち上がりサーブもスムーズに行えます。

café/茶器
café/茶器

「bico」コーヒーとすごす穏やかな時間のためのポットとカップ&ソーサー、日本茶ですごす寛ぎの時間のための急須と煎茶、茶たく。自分らしい大切なひと時を共に過ごす優しいお茶の器たち。

共につくる

陶磁器のものづくりは、土や炎など調整しきれないものと調和し、結果として適切な製品として作り上げるという要素があります。依頼者やデザイナーの考えを受けとめ、それらを地域に根付いた素材や技術で表現する方法を試行し、共に無理なく寄り添うように開発する。企画・成型・絵付・焼成。全ての工程を自社でおこなうことにより、ものづくりの細部に目を配り、大切にし、そして、最適な製品を焼き上げる。それが私たちの共につくるものづくりです。

savone
savone

コンソーシアムブランド「Metaphys(メタフィス)」との共同開発。重なり合ったシャボン玉のような楽しく、そして洗練された三種の仕切り皿。

Drops draw the existance
Drops draw the existance

デザインクロックを中心としたライフスタイルアイテムを製造する日本発のデザインメーカータカタレムノス様のご依頼の白磁土の質感が心地よい置時計。

瑞々mizu-mizu
瑞々mizu-mizu

デザイナー小野里奈さんと轆轤成形で白磁の器を作る小田陶器。そして深山。料理がみずみずしく映えるよう、食卓の風景を描きながら、共に制作した器。

谷川岳高山植物図鑑ノ器
谷川岳高山植物図鑑ノ器

東京芸術大学油画技法材料研究室が制作した谷川岳の高山植物図鑑に描かれた草花を、焼き物の技法で可能な限り忠実な色合いで再現し、上絵付けした器。