今回、Discover Japan10月号にCrease大皿と煎茶碗をご掲載いただきました。
『ホームパーティーでうつわを語ろう』という国内の九つの陶磁器の産地をご紹介頂く記事の中、美濃焼の項にてCrease大皿と煎茶碗をご案内いただいています。
この機会に改めて、わたしたがものづくりを行っている岐阜県の南東部『東濃』地区の多治見市、土岐市、瑞浪市で生み出される『美濃焼(みのやき)』とは、どのようなやきものであるか?
というようなことを、わたしたちの想いも多少入り混じりながらご紹介いたします。
今回のご掲載の内容は、瀬戸焼、常滑焼、美濃焼、萬古焼、信楽焼、九谷焼、清水焼、有田焼、波佐見焼と九つの産地と技術をそれぞれの産地の代表的なスタイルの器を例としてご紹介すると言う記事で、美濃の特徴的な釉薬の一つである深い緑の織部釉の器としてご説明頂いていますが、こうして他産地のスタイルと並んで見ると一口に陶磁器と言っても、その幅の広さを感じられて面白いです。
今回は美濃焼の代表として織部釉の器を取り上げて頂きましたが、説明文にも【良質な粘土が採れ】とありますが、美濃焼の根本的な特徴は、特性の異なる良質な粘土原料が複数種採出され、それらを様々な配分で調合することで磁器と陶器と言う大きな区分を筆頭に様々なやきものが作れる基礎があったことです。
その為、実際の美濃焼は、その特性がわからなくなるほど細分化され多くの種類のやきものがあます。
例えば、今回の織部釉一つについても、掲載頂いた深い緑色の釉薬のものは【総織部】と呼ばれる代表的ですがあくまで織部の中の一つのスタイルで、その他にも、より鉄分が多く黒みの強い【織部黒】や、鬼板と呼ばれる鉄系の絵の具で絵付けを加えた【青織部】、緑釉と絵付けを施した白地を掛け分けた【鳴海織部】.緑の要素がほぼ無い【赤織部】や【絵織部】、志野釉と言うもう一つの美濃を代表する釉薬と掛け合わせた【志野織部】、他産地のスタイルを組み込んだ【伊賀織部】【唐津織部】など多岐にわたります。
そうした環境のため、美濃焼はよく、何が美濃焼か分からないと言われますし、産地内にいる私たちでも、単純に説明することは難しいです。
あえて言うのであれば美濃焼とは、器の一つの形態を表す言葉ではなくて、様々なやきものを生み出すことが可能な粘土原料が算出されたと言う特性を背景に、形式にこだわらず、陶磁器の様々な可能性に挑戦すると言う姿勢を表す言葉であると考えます。
そして、その姿勢は、織部の名の基となった、桃山時代の武人であり、茶人でもある古田織部が、その前時代の千利休のスタイルに敬意を払いながらも、自身が求めるやきもののスタイルを創出した辺りに端を発するように思います。
そうした意味でも、今回の記事の中で美濃焼のご紹介にて織部釉の器をご紹介頂いたのは、ありがたいとともに、美濃焼の根幹を表して頂いています。
分かりづらい美濃焼のことが、少しでもご理解いただけたら幸いです。
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